【Q&A形式でご説明(3)】なぜキャノンはリサイクルアシストを訴えたのですか?
最高裁決定によりエコリカがエプソンに勝訴が確定した前日、同じく最高裁でキャノンがリサイクルアシストに勝訴し、新聞などではこちらのほうが大きく報道されました。
世間が注目するキャノン勝訴の最高裁判決について、もう少しご説明したいと思います。
※法律論になる部分がありますので、コメントの難易度を
<難易度C>
- なぜキャノンはリサイクルアシストを訴えたのですか?
リサイクルインクのシェアから見ると、あまり店頭でも見かけることのない
リサイクルアシストがなぜ訴えられ、最高裁判決にまで至ったのか釈然と
しない方も多いことと思います。
なぜキャノンはリサイクルアシストを訴えたのでしょうか?
中国製のニセブランド品や、違法コピー品が世界中に蔓延して問題になって
います。
日本政府はこれら知的財産侵害物品の国内への侵入を水際で食い止めるため、
税関による知的財産侵害物品の取り締まりを行っています。
キャノンはこの制度を利用して、キャノンが保有している特許権を侵害しているインクカートリッジの輸入差止を税関に申立て(※1)受理されました。
リサイクルアシストは、マカオに本社があるユニオンテクノロジー社が中国で製造した「リサイクルインクカートリッジ」を輸入しようとしたのですが、これがこの制度により輸入差し止めとなってしまったのです。
そもそもこの知的財産侵害物品の取締りは、ニセブランド品や違法コピー品の取締りを目的としたものです。しかしこの制度には一点問題点がありました。
それは、輸入差止申立が受理されてしまうと、その後は受理申立人の一方的判断だけで「侵害疑義物品」とされた物品の輸入が差止められてしまうという部分です。
リサイクルアシストはキャノンがこの申立をする以前から「リサイクルインク
カートリッジ」を輸入していましたが、この制度の適用により突然「侵害疑義物品」とされ、輸入差し止めの対象となってしまったのです。
当然、リサイクルアシストは困ってしまいました。顧客とは納期の約束もあったと思います。やむなくリサイクルアシストは通関解放制度(※2)を利用して税関を通過させ貨物を受け取りました。
そうなるとキャノン側は一度「知的財産侵害疑義物品」と主張した以上、その商品が国内で流通するのを見逃すわけにはいかなくなります。
こうして、キャノンはリサイクルアシストを東京地裁に提訴することになったわけです。
(※1)輸入差止申立制度
知的財産のうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権及び育成者権を有する者が、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差止め、認定手続を執るべきことを申し立てる制度です。《関税法第69条の13、同施行令第62条の17》
(※2)通関解放制度とは
輸入差止申立てが受理された特許権、実用新案権又は意匠権に係る貨物について認定手続が執られたとき、輸入者は一定期間経過後、税関長に対し認定手続の取りやめを求めることができる制度です。その場合税関長は、当該認定手続に係る貨物が輸入されることにより権利者が被るおそれがある損害の賠償を担保するため、相当額の金銭(通関解放金)を供託する旨を命じ、通関解放金が供託されると、認定手続きを取りやめる、輸入を許可します。《関税法第69条の20、同施行令第62条の31、62条の32》

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